ひよこ・ブルース2017❤︎
- 2017/01/12
- 12:03
冬は街が華やかだ。
ところが華やかなのは街であって、行き交う人々は分厚い防寒着に包まれていて、さっぱりおもしろくない。
ナオは冬が嫌いだった。
脱いだら実は大きい柔らかな乳房が揺れる、脱いだら実はアレが固く張りつめていた、脱いだら実は、脱いだら実は。
そういうのが嫌いだ。
おかたそうな雰囲気だが実は、嫌がっていそうだが実は、実は、実は。
そんなものはファンタジーでしょ。
冬はファンタジーだ。
真実は防寒着の中。
脱がせて、むき出しの真実が見たいわけではない。
だって寒いもん。
柔らかいものも、大きいものも、かわいいものも、寒くて冷たくて、それどころじゃなくなってしまう。
だから冬は嫌い。
柔らかいものは好き。
マフラーもセーターも柔らかい。
柔らかいし、温かいから。
冬は嫌い、だけど冬のものは好き。
ナオはトートバッグのなかの7羽のヒヨコのぬいぐるみたちをなで、柔らかな手触りに微笑んだ。
4羽のヒヨコをマフラーと首の間にはさんだ。
特に温かくはなかった。
コートの袖と手首の隙間に左右2羽のヒヨコを詰めた。
隙間風がなくなって快適だ。
首の4羽はバッグに戻した。
街を行き交う人々の何人が、ヒヨコを持っているか、それはわからない。
パンツの中にヒヨコのぬいぐるみを入れてるの、実はひそかに。
そういうことも思わない。思わないし、入れてない。
明日、入れてない保証もないけれど。
それでも確かなこと、それは。
「おでん食っていかない?ヒヨコのおねえちゃん」
そう、わたしは、ヒヨコが袖から飛び出ているということ。
屋台の店主は空いた座席を指差して手招きしている。
のれんをくぐると、先客たちが一斉に目をそらした。
おでんは味がしみておいしかった。
「おねえちゃん、それ、逆じゃないの?」
店主が指差した左のヒヨコは、ビールグラスに背を向けるように袖に頭をつっこみ、右は今にも箸をつたってはんぺんをついばみそうだ。
たしかに逆かもしれない。どちらかはわからないが。
ナオは左のヒヨコに前を向かせた。
店主に両手を掲げると、店主は強めにうなづいて、客全員が笑った。
角の席のスーツのおじさんが、ピヨピヨ的な声を出して、一瞬、場が静まったが、また誰かが笑いだして、なんか楽しそうだねえ、と新しく客が入ってきた。
「おっなにそれヒヨコ?ヒヨコかわいいよねえーオヤジ熱燗ある?」
「あいよ」
こうして、夜はいつものように。
汗ばんだナオはマフラーをとり、ヒヨコをはずしてコートを脱いだ。
ハンカチで首もとの汗をぬぐい、喉を鳴らしてビールを飲んだ。
m(__)m
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