ポール・エレクション・ブルース (後編)
~前回までのあらすじ~
日課の街頭演説オナニーを満面の笑みで終えたマキノの前に現れた女子大生サナダ。
彼女はマキノの射精を見抜いていたのだった、、、
「マキノさん、臭すぎるよ。洗いましょう?ここで」
マキノの思考は完全に停止した。
耳かきの先端がお目当ての耳垢をこすっている時、まるでそういう表情で、つまりは、意識がどこかへ飛んでいる。
「話題をかえましょうか」
サナダは再びマキノの手を人差し指でトントンと叩いた。
「話題をかえましょうか」
赤いマニキュアの塗られた指先が触れているのが自分の手であることに気づいて、マキノは居眠り運転をしてしまったような性急な罪悪感で我に返りサナダを見た。
サナダは心配そうな顔で、話題をかえましょうか?、とマキノを見ている。
サナダの表情は本当に心配に満ちていて、この女性に不安を癒やしてほしいと心底思った。
同時にマキノは一瞬、ここがどこで、今日がいつか、完全に見失った。
それは恐怖だった。
自らの性癖も、それをつい先程遂行したことも、現実感がなかった。
コーヒーを飲み、熱い液体がのどを通る感触を確かめる。
尻は、2回分の射精とお漏らしを受け止めたオムツでゴワゴワとしている。
現実だった。
「少し、わたし自身のことをお話ししますね。きっとそうしたほうがマキノさんにも理解していただきやすいと思うの」
この女だ。恐怖はこの女がもたらした。
最も知られてはいけないことを乱暴に見抜かれ、それでいて慰めてほしいと思わせる。
「わたしね、男性の顔や手を見れば、ペニスの形や長さや太さや精液の出方がわかるの、あ、店員さん、スコーンください、あ、あと勃起の具合なんかもわかるよ」
マキノはどうしていいかわからなくなり、助けを求めたいのだが誰に何と言えばいいのか全く言葉が浮かばなかった。
このまま意識を失って病院に運ばれたい。
サナダの異常な自己紹介を聞いてはいけない。会話をしてはいけない。
マキノは、ソファに沈んでいくようなめまいにも似た感覚に合わせて、自分がソファの一部であると思い込むように努めた。
自分はマキノでなくソファや床やコーヒーカップや窓ガラスなのだ。
「聞いてんのか、おい、チンカスマキノ」
マキノは住職に肩を叩かれたように背筋を伸ばした。
マキノは、マキノを辞めることを許されなかった。
「だからね、政治とか興味ないの。駅前でマキノさんを見た時、ピンときたの。あ、この人今射精してる、って。ピュッピュッじゃなくて、ドロドロドロって、真性包茎のペニスが上から下に精液で濡れていくのが見えてさ」
スコーンが運ばれてきて、店員は注文時会計だと言い、マキノはとっさに財布を取り出し1000円札を手渡し、お釣りは募金箱に入れてくださいと言ったが、それはペンギンが描かれた何かのポイントカードだった。
「もう、マキノ様ったら」
店員とサナダが一緒に笑い、マキノは耳の先まで真っ赤になるのを感じた。
そして、もっと笑われたい、と思った。
汚れたオムツをしてよつん這いで店内を這い回り、指をさされている自分を想像した。
「まだそのクサチンポ洗ってなかったね」
サナダはトレイの上のおしぼりをマキノに手渡した。
マキノは速やかにベルトを緩めスラックスをオムツごとひきさげた。
サナダはスコーンをほおばり、おしぼりで口角をぬぐった。
「ちゃんとすみずみまでね。包皮もむいてくださいね」
マキノはピカピカにするぞと決意し、街頭演説でも出したことのない会心のいい声で、はいっ、と答えた。
「どう?きれいになった?」
包皮を広げても亀頭を拭いても声をあげそうな刺激があったが、マキノは全身の筋肉で自制した。
絶頂の予感も全身全霊で抑えた。
「できました」
「チェックします」
サナダはソファの位置ををずらして、マキノの勃起したペニスを見た。
「うん。いいね」
褒められた。
「うん、いいね」「うん、いいね」「うん、いいね」「うん、いいね」「うん、いいね」「うん、いいね」
サナダの微笑みと声が脳内に充満した。
マキノの硬直した全身の筋肉は弛緩を求めて痙攣し始め、異常な貧乏ゆすりをしているようだった。
やがて、巾着の口のような先端が粘液で光りだした。
「あららら」
マキノは泣いてしまいたくなった。限界まで筋肉を硬直させてこらえた。。
「ほら、これで拭いてください」
サナダはバッグから赤い、見るだけで上質な肌ざわりを感じさせるハンカチを取り出し、マキノに手渡した。
「すみません、限界です、いきます、だめです、いきます」
ハンカチの中で液体入りの容器が破裂したように、一気に染みが広がり、マキノは涙を流しながら弛緩した。
「すみません、いきました、すみません、いきました」
マキノが謝るたび、染みは大きくなった。
サナダは静かに笑った。
マキノは、真剣に、人のために、世のために、訴えるべきことがあるのではないか、そう思った。
涙がとまらなかった。
(了)
( ^ω^ )
川瀬出勤日です!
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